先従隗始・温故知新

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 顧客の期待値を意図的に引き下げる

 顧客の期待値を意図的に引き下げる――。日本企業はそんな戦略にもっと目を向けてもいいのではないかと、今号の特集を通じて感じました。言うまでもありませんが、CS(顧客満足度)は、顧客が実感した水準と期待値との差で決まります。
誰しも高級レストランに行く時には、居酒屋に行く時よりも、料理の味や接客に高い水準を求めます。そこで期待ほどでなければ落胆しますし、逆に居酒屋で期待以上においしかったり、お店の雰囲気が良かったりすれば、満足度は高まります。

 別の言い方をすれば、サービスの絶対水準は高級レストランの方が高くても、満足度は居酒屋の方が高いということは十分あり得ます。ところが、この点が企業によっては、理解されていないように思うのです。日経ビジネスは「アフターサービスランキング」を毎年1回恒例で実施していますが、結果を掲載するたびに、一部の企業から「どうしてあの会社よりもウチの方が低いのか」という質問を頂きます。
原因が期待値の差にあることも多いのですが、納得いかない表情なのです。

 「お客様は神様ではない」。今回の調査で銀行部門の首位に立ったソニー銀行の石井茂社長がこう語っています。同社の評価が高い秘密は、顧客に自分たちの企業姿勢を理解してもらい、過剰な期待を抱かせていないことにもありそうです。
日本の消費者は、高額品を買う時も値段の安い商品を買う時も、至れり尽くせりのサービスを求めがちです。その期待値をうまくコントロールすることも重要です。
闇雲にサービス強化に突き進むことだけがCS対策ではありません。

                    (日経ビジネス編集長 山川 龍雄)