先従隗始・温故知新

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ロードバイクのディレイラーハンガーは再生できる

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http://d.hatena.ne.jp/geasszero/20150729/1438229207




あくまで非常用、日常のゆったり用に限られてしまうが、再生して再利用はできるのだ。
世界中でそんなことを考える人は殆どいなくて、いろいろ試行錯誤している人はネットには出てこないが。


要は「ギプス」
ほねつぎ、整形外科の技術と変わらない。


というかメーカーも後追いばかりで馬鹿ばかりだよね…正直。
なんで穴あけや位置決めの絡む「精密・高級パーツ」を1ピースにして高額にするのか。かつ「ヒューズ」にしてしまって使い捨てにするのか。


自動車産業や家電産業にいた技術者なら「馬鹿じゃないのか、非効率な、ハイコストな」と思うことだろう。


ヒューズは見ればわかるが、非常に安価で簡素な構造の部分だけをヒューズにしている。
回路基板までセットにしていない。高額になってしまうからだ。


だがロードバイク業界の技術者はどうも他業界の実務経験を経た人がおらず
そういう技術の基礎がわかってない。わかってないまま国際規格を作ってしまう。


ディレイラーハンガーはネジ穴あけと位置決めとでかなり精密さが要求され、
3千円程度と高額だ。家電や自動車の技術者なら、穴あけや位置決めの部分は別体にして、
「フレームを守るために折れる部分」だけを安い500円程度のヒューズにするだろう。いわば3ピース構造だ。


むろん、プロレーサーにとってそんな重量が増す構造は邪魔だ。
プロレース向けには従来通りの1ピース構造がいい。


しかし民生品としては、1ピース構造は全然使い物にならん。
5グラム軽くするためだけに、車体だけ停止中にうっかり倒しただけで折れ曲がるほど華奢なハンガーは不要だ…


今回は、テストを兼ねてそのような試作品を作ってみた。
折れたハンガーを使って。


結果は大成功。まずはブリジストンやGIANTなど身近なマンモスメーカーから採用を打診しようと思う。


この試作品の構造の要点は「ギプスのみが交換部品=安く済む、携帯しやすい、交換しやすい」ということ。
従来通りに華奢に折れ曲がってフレームを保護するが、ハンガーまるごとお買い求めする必要がない。
材質はステンレス。しかしアルミより薄く細くできるので質量は大差ない。
ステンレスはなまくらの鉄とニッケルの合金なので、折れず曲がる。手曲げでのアバウトな修正も何度かできる。つまりツーリングでの生存性が高い。
しかし容易に曲がるのでフレーム保護性は高い。


むしろ、アルミはとっとと折れるので
固定ステーを失ったRDが自由に飛び回ってホイールと絡んで喧嘩してしまいスポークを折ったりチェーンを再起不能に曲げたりRDを全損させたりする…へたすれば乗員を落車させ重傷や致死にまでする…
つまり、いくら「フレームだけ」保護しても意味が無いんだが、そこは自転車業界しか経験のない経験不足のアホ欧州技術者が考えたツール・ド・フランス専用の仕組みなのでしょうがない。


ここは日本のロードバイクメーカーが率先して、
3ピース構造の普及に取り組んでもらいたい。
質量や製造コストは1ピースと大差ない。ヒューズ部分は細いステンなので安い。
精密で高コストな取り付けネジ穴部分は破壊されず温存される。


特に、一日150km走りながら日本一周するような人たち、通勤にロードバイクを愛用してる人たち、には有用だろう。


以下に画像を示す。

適当な作りだ。カインズホームでステン80円ステー、M4のそれぞれ長さの違うネジ両方共5円づつ、を買って、ドリルとタップとダイヤ砥石とセラミック砥石で、M4で穴を開け直して、ギプスするだけ。
とはいえかなり精密な加工スキルは必須。見た目ほど加工は容易ではない。
ステンレスは「焼き入れ鉄」に次ぐ難削材なので、素人では穴あけすらできない。プロでもかなり高級な工作機を使わないと手作業だけでは狙った位置に穴が開かずズレる。ドリルや砥石など切削工具もどんどん使い捨てでいくつも使わないと穴は開かないので予算はかかる。
旅先で応急処置で作成する場合は、ステンではなく焼きの入ってない鉄材を使う方がいい。ただし容易に曲がりやすいので少し厚めの板ものを使うしかない。


試作品も純正品より1mmほど長くなるぐらいには穴の位置がずれてしまった。
そのせいもあるのか、1sに入ってくれない。0.8mm板を使ったので容易にねじれてるせいもあるだろうけど。


20kmほどおとなしく試乗したが、ギプスステーが薄いためねじれてしまい、RDの応答が安物っぽく遅くなるけど
普通に動作してくれて、普通に乗れた。ママチャリや中距離ポタリングのようなゆったりした用途ならこれで十分だ。
ねじれやすいので、純正品のように体重をペダルにかけっぱなしでガンガン変速をしてはいけない。むしろ抜重しながらゆっくり変速の完了を見届ける。
そもそも純正ハンガーを見れば分かる通り、あんな脆弱な強度でもずっと使えるぐらいだから、そんなに強い応力はかかっていない。


むしろあまり頑丈で太いステーをギプスにしてはダメなのだ…強すぎると転倒時に曲がりもせず、フレームに応力が集中して亀裂などの原因となってしまう。
ステンであれば厚み2mmまでにしたほうがいいだろう。


固定ネジが出っ張るので、これがQRに当たる。
ネジ側=片方だけ当たってるので、もう片方の隙間はアルミ缶を切って板材にして、扇子状に折り曲げて厚みを確保し、隙間に差し込んでスペーサーとしてしまう。
固定ネジはできればネジロック剤を使う。常用する場合は特に、ネジロック及び数日おきの点検が必須だ。
当然、ネジもステーも、糸ノコや金ヤスリ等で削って形状を出さないと出っ張ってしまい、RDが取り付けられない。画像のとおりである。
金ヤスリは結構すぐ削り終わる。ステンはドリル、砥石、なんだろうがなかなか穴は開かない。薄くなってきたらポンチで両面を叩きまくって金属疲労させてどうにか貫通する。ステンは伸びるので薄くなると穴が開かずに凹むのだ。


…以上のことは、メーカーや町工場で、それなりの工作機を使って、高単価の製品を作ってきた加工技術者なら


仮に自宅から数百km先の知らない街でハンガーが折れても
近くにカインズホームやジョイフルホンダやコーナンを探し(どんなネジでも売ってる大型ホムセン)
加工場を借りて加工すれば、作成可能だ。
いわば「冒険野郎マクガイバーhttps://goo.gl/5kSAb5
夜に折れてしまったら野宿して、翌日にホムセンに行けばいい。途方に暮れて夜通し押し歩きしなくていい。


ちなみに、どうしても押し歩きしかできない場合は
むしろまたがって、足で地面を蹴って、ローラースルーゴーゴーした方がいい。
ママチャリ並みの平均時速で移動できる。
一段高い歩道の縁石を蹴ればさらに速度はアップ。これがある街道と、ない街道とでは、平均時速がまるで違ってくる。
ビンディングシューズの場合は、移動開始の前にクリートを外すこと。十得型の携帯工具は持参必須だ。
カーボンの場合は摩耗で全損してしまうので、ガムテープを買ってぐるぐる巻くなどして靴底を補強。


 ◆



それにしても、
RDのケージも軽い曲げ修正で済んだし…プーリーがガタガタしながらチェーンの振動を吸収してるので。厳密な精度で上下プーリーとリアギヤが平行である必要がない。
チェーンも無事だったし。
ハンガーのギプス化だけで乗れるようになったのはラッキーだった。



人によってはハンガー折れてホイールに絡まって後輪ロックで転倒して乗員が大怪我でスポークは折れてRDお釈迦でチェーンもぐんにゃり曲がって…
って悲惨になるので
今回はラッキー。
これでもメーカー側は「フレームを保護しました! キリッ」とか断言するんだから…お前たちは何を守っているのか…


イオンの駐輪場で発車しようとしたら油断して車両だけ倒しちゃっただけなので。
たったそんだけでハンガー内側へ曲がってて低速側の変速がおかしいので、何も知らずに手曲げで修正しようとしたらポッキり…シティサイクル規格とは違うのね…
そこから47kmのローラースルーゴーゴーや徒歩で9時間。すでに片道95kmの150kmまで走ってきたあとの9時間。


http://d.hatena.ne.jp/geasszero/20150519/1431961924


 ◇


こいつはロングツーリングの時は予備で持って行こうかと。
新品はいくつ持参しても折れたらおしまい。こいつは折れないけど曲がるから。ステー部分は出先のホムセンで自作しやすいし。