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花粉症の「避粉地」 NPOが的山大島ツアー実施
花粉を飛散させるスギやヒノキがほとんど生えていない長崎県平戸市の的山(あづち)大島が、花粉症に悩む人たちの“避粉地”として注目されている。地元のNPO法人が4年前から花粉症患者を対象に始めたツアーでは、参加者の大半が症状の改善を感じ、「鼻から思い切り空気を吸えた」と感激の声もあがっている。飛散量が増える春先から島への一時避難を検討してもらい、島おこしにつなげようと期待が広がっている。(河津佑哉)
的山大島の住民約10人でつくるNPO法人「文化財匠塾」平戸支部によると、島内は自生の松やカシが多く、スギやヒノキの植林が占める面積は島全体(約15・5平方キロ)の約2%(約0・3平方キロ)。島は本土から北に約15キロ離れており、花粉が飛来してくる恐れもないという。
長崎大が2009年度に島民のスギ花粉症についてアンケートを実施したところ、当時住んでいた1438人のうち1027人が有効回答を寄せ、「花粉症」は2・6%にあたる27人だった。全国平均(26・5%)の10分の1で、避粉地としても有名な沖縄県の6%を大きく下回る。
実際に花粉症に悩む人から「島を訪れると体調が良くなる」という声が寄せられたため、同支部は08年から毎年2〜3月に島外の患者を対象にした2泊3日の体験ツアーを行っている。
旅館などを拠点に古民家が残る街並みや棚田を巡る一方、同行する耳鼻咽喉科の専門医から食生活の改善指導を受ける内容で、過去4回に東京、福岡などから計約40人が参加した。
終了後、鼻づまりやくしゃみ、目のかゆみなどについて医師が実施したアンケートでは「久しぶりにマスクなしで過ごせた」といった声も聞かれた。
評判は口コミで広がり、埼玉、神奈川方面からの問い合わせも増えている。今年2月24〜26日のツアーは20人の定員がすでに埋まり、来年以降はより長い日程のプランも検討する。今回は県の補助を受けるため、交通費を除けば無料という。
的山大島は農漁業が主な産業で、戦後間もない頃は5000人以上が住んでいたが、過疎と高齢化が進み、空き家が増えている。
同支部の米村伍則(いつのり)さん(66)は「空き家を開放し、将来的には定住する人が出てきてくれれば」と期待している。ツアーの問い合わせは、平戸市大島支所(0950・55・2511)へ。
(2012年1月13日 読売新聞)