先従隗始・温故知新

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銀河漂流バイファム 18話を科学技術する

天国の神田さんや星山さんらに捧ぐ。


 ◇


エンジニアとして、18話の設定考証をぶったぎってみる。
むろん当時の制作スタッフだって「しょせんお子様アニメ」ということでデチューンしていただろうけど。


・133食の誤入力は、Y/Nの最終設問を設置するのが常識なので、起こりえない
・133食出てきてしまう時点で「こらーがんこちゃん、誤入力したな」と気づかれ叱られる=冤罪は起こりえない=カツオがかばう必要もない
なぜなら誤入力しないと、133食分の材料を投入する工程が発生しないためである。


・133食を製造すると言っても、出てくるスピードが速すぎる
製造ラインにいると、あんな感じでどんどん出てくる食品製造ラインは確かにある。
しかしどんどん溢れだしてもいいような袋入りの食品に限る。人出を募ったり挽回でハッスルしたりして番重につめていく。
自動調理で、トレー入りの定食を作るような機械では、あのような高速化は設計欠陥である。
むしろ、出口ベイに一定数たまったら拠出を止める=自動調理工程などライン作業全体を止める、設計にしないと、
どんどんあふれてトレーが落ちてしまうような=回転寿司店でどんどん供給してついに一部の皿がコンベアから転落するような、そんな欠陥設計は工業デザイン的にありえない。
ボトルネックをなくし、スムージング化する…それがラインエンジニアのライフワークである。人にも機械にも過負荷をかけない。


・自動調理器はむしろ手間がかかる
調理器は、衛生第一…でないとすぐ雑菌大繁殖で食中毒…O157ノロは伊達じゃない。
お掃除すごく大変だよ…飲食店や、食品製造工場で、機械を担当すると分る。
いつまでも「コンロにフライパン」から脱却しないのは、自動機だとむしろ手間が掛かり過ぎるし、応用性がないから。
回転寿司の自動握り器は、かなり大勢の客が来るから仕方なく使っているし、あれはひたすらシャリを握るだけでシンプルだから可能。
玉ねぎと肉を入れただけでハンバーグが焼けて出てくる、なんてのは運用上、実用的ではない。焼き加減だって自分で調整したいだろうにそれもできない。そんなものはグーテンベルクグーテンバーガー)だけに任せておけ。
だから結局、サイゼリアや宇宙船では今も、「簡単レンジでチン」ばかり大盛況なのだよ…長年航行する宇宙艦なら冷凍レトルトにまさる手段はない。


・火災警報は、自動音声メッセージ式ほど高度のシステムならば、数パターンある
中央監視室側に対し「火災報知器のスイッチが押されました」
ならばいきなりハロン消火設備の起動のフェーズにはならない。中央監視担当者が確認に行くか現場担当者に電話で問い合わせれば済む。現場カメラ映像を使うかもしれない。
むしろ、出火をセンサーで検知し、自動消火設備が自動起動する。火がなければ消火は行わない=資源節減にも則している。
その際に現場付近は自動音声メッセージで「何十秒後に消火ガスが散布されます、人員は至急退出してください」といった呼びかけが行われる。じっさいに研究施設などではそのような設備はある。
正常なマニュアルであれば、中央制御室の担当が艦内放送で「現場担当者は全員退避を確認してから退出してください」などとなるはず。
宇宙船なので、電車や飛行機と同じでことは一刻を争うが、フェイルセーフであり、人が閉じ込められたまま脱酸素消火フェーズに入ることはない。


シャロンが簡単に宇宙服の外装板を外して組み付けてる
気密性を鑑みればありえない設計。


シャロンが工学部レベルの高下駄を開発し組み立て成功してる
足は設置して立てればいいから普通の日曜大工レベルの高下駄を作ればいいし
手先は高度な技術によるマニピュレーターを内蔵しないと、大人でもフィッティングするのは難しい。
結局は普通の衣服のように身長別であつらえるのがシンプルで簡単。


・荷電粒子砲それも中性子バズーカって…
防護服でないとえらい被曝するぞ…東海JCOだ。
というか宇宙とは遮蔽物のない高放射線量地帯そのものだが…宇宙線放射線
中性子は物体なのでいくら真空とはいえ、レールガンで加速しても、何百何万km先の敵の基地へ届く頃には威力がなくなってるかも。


・荷電粒子砲=レールガンである以上、無反動装置は必ずオフセットである
ケンツがうっかりミスで反動をつけて吹っ飛んでいたが、あれでは設計ミスである。
レールガンが発生させる反動はなんせ大量の中性子を高速化などという途方も無い規模だから
あんな生易しい反動では済まない。すべてIT化してあらかじめファームウェアパッケージ化され、自動で無反動作動せねばならない。
対消滅のために、かなりバーニア噴射するか、発射側の180度反対側にも中性子結束ビームを撃つだろうから、母艦からすぐ見える位置で運用すべきではない。いっそ巨大な鉛のインゴッドを多数装着して反動抑止する設計も考えられるがこれは巨大化を免れない。
そうなるとリヴァイアスのヴァイタルガーダーみたいに、母艦の一部をパージしてそのまま活用する方式が良い。質量確保が容易だから。
しかも中性子を撃つバズーカだから、その構成材が被曝し続け、「かなり高い放射線源」になってしまう。物体の放射化である。接触で何百ミリシーベルトにもなる。つまり発射直後ほど運用性が難儀なのである。しかもお中性子線は貫通力が凄まじく、バズーカ構成材を急速に脆化させるだろう…人体も無事では済まない=衣服を防護措置で工夫するぐらいでは中性子線はどんどん貫通してきて全身の細胞を破壊する。
放射線治療装置はX線を500ミリシーベルトほど照射するガン治療装置だが、中性子線より貫通力の弱いX線ですら、照射寸前に、医師や技師は「ダッシュで逃げる」大急ぎで患者の元から逃げるのだ…物理的に距離を離れ、鉛防護壁に隠れる…しかまともな防護策がない。中性子線はその鉛の壁すら突き破る。





シアターの描写はさすがだ。デジタルビデオ、オンデマンド、SSDなりHDDの大容量ストレージ、といった描写が暗示されている。少なくともフィルムではないね。


作中では艦船操縦運用マニュアルをすべて小中高の未成年たちが学習しながら運用してるが
イージス艦と艦載ヘリを小中高だけで運用するようなもんで、まあムリだろう。
そうとう直感的でわかりやすい、「スマホひとつで簡単運用、ご家庭の主婦でもできちゃった」
みたいなシステムを構築してれば別だが
ふつうは軍艦や練習船は「プロが使うもの」としてむしろ難しくて構わないと突き放した設計である。
ヘリを飛ばして敵機を撃墜したり、振り切ったり、するより
宇宙空間のかなり広範囲で超高速な世界で、戦闘したり、激突を防いだりと…こっちのほうがはるかにサドンデス、スレスレ紙一重で、難易度は高い。範囲は何百km、速度は常に秒速の相対速度…しかも人間の感覚が通じない無重力での作業環境…
人が座ってるだけでいいフルオートでないと無理。そうなると戦闘兵器はみんな無人の無線操縦のドローンだけでいい。戦術も戦略も作戦も実行も、航行上のこ難しい計算も、すべてコンピュータウェアとドローンがやってくれる。


そうした意味で、いい線をいってたのはリヴァイアスだ。あれはバイファムリバイバルという思惑がサンライスにはあったはずだ。
リヴァイアスでは何百人も高校生がいて、全員が軍艦や宇宙船や宇宙空間作業の専門工程を履修中の学生だった。おおまじめに「宇宙での十五少年漂流記」の実現を考証していくとどうしてもそうなる。


2050年だか知らないがジェイナスの技術レベルってどれだけ高度で、素人さん大歓迎の幅広さなんだよ…
まぁすべては妖怪のせい、じゃなくて「艦に安置してた変な遺跡のせい」で、済まされるんだが…
そうなるともうオカルトだからな…いちおう古代文明オーパーツとはいえ。


いくらククト文明側はその遺跡のせいですべての電子機器がストップしてしまうといっても
そうなればシャア部隊みたいな潜入部隊が体一つで必ずアプローチしてくる。
戦争である以上、人間同士のコミニュケーションはむしろ欠かせないのだ…兵器でひたすら攻めるだけという訳にはいかない。
これはバイファム制作において参考にされたスタートレックで分かる通り。
(まあID4みたいな映画はいつも、なんのメッセージもなく、最後まで接触も交流もなく、ひたすら攻めてくるけど)


それとジェイナスが大きすぎる。移民船でもない限りあそこまで大きくなくていい。
宇宙での交戦を考慮すると、あの大きさはむしろ不利だ。ラー・カイラムみたいな深層部のCIC戦闘ブリッジもないし…
なんかヤマト引きずってるんだよね。第三艦橋って砲撃を避けるために低い位置にあるから、宇宙空間では無効な設計。
アーガマをコンパクトにした設計…リーンホースJRとか、マクロスバトル7みたいな小型化戦闘特化型の発想…あのぐらいでいい。河森は軍事研究してるのでやや造詣が深いね。ジェイナスのデザインはアニメというより工業的で好きだけど。


蛇足だが、芦田茂雄の画風は、現代の価値観でも、この頃が一番良い。
ワタル以降ぐらいになるほど、90年代にありがちな「行き過ぎたデフォルメ」になってしまい、ママコレチガウー