先従隗始・温故知新

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ヒートペンで、ノートPCのキー(パンタグラフ折れ)を修理


最近のDELLの場合、樹脂成形で突起を作って、本体側のステンレス?の爪に引っ掛けてる。
あるいは、本体側に樹脂のベースがあってそっちへパンタグラフがついており、キートップは嵌めこむだけ。
まぁどのメーカーも大差なかろう。


この樹脂の突起が折れる。うっかりとかでも、まま折れてるのを見かける…オフィス環境では特に。
本体側が金属だと、樹脂のほうが弱いから折れやすい。


これは帯電抑止や耐久性などの理由から、通常のプラ製品で使われやすいABSやPSではなく、
ACS樹脂』を用いている、少なくともDELLでは。



ACSとABSの違いはググればすぐ分かる通り、配合するのがBゴムか否かの違い。塩素系を入れるとBがCになるわけ。


さておれもいっぱしの金型エンジニアだった男だ…かつてシャアアズナ略
このぐらい、強引な手作業ででも修理しないと元プロの名折れ…


ドラえもん「ヒートペン!」てっててー♪http://www.towadagiken.com/sub/purple5.html


何度やってもアロンアルファでは接着しなかった。つまりゴム系が含まれないので融合しないのだろう。
ってことは熱成形しなおすしかない…


パンタグラフには、テコ装置が含まれるので結構長い。左右のテコが接地し続けるので傾かずボタンが動くわけ。
このテコを、突起が折れてる方は、廃止してしまう。
つまりテコの部分を溶かして突起を再成形する。外科で言えば皮膚移植や骨移植の発想。


PS=プラモとか袋菓子の受け皿でよく使われる、や
ABS=PSと似た感じで使える、ただし接着はアロンアルファのみ、と違い
ACSの溶解温度はとても高く、220度付近(ただしヒートペンの目盛り読み…うちはコテ先を少し伸ばしてるのでコテ先温度が低い…伸ばさない時はコテ先温度は20度は高くなるので注意)であった。
つまり溶け始めると一気にサラサラの液状になり、とても整形しづらい…ヒートペン=熱ゴテの温度を上げ下げしながらなんとか、溶けかけのチョコをコテでケーキへ塗りつけるような作業ができるよう、微妙な硬度へ持っていく。


パンタグラフのテコを少しづつ溶かし、肉盛り…サラサラになりやすくなかなかうまく行かない。
一度はマイナスになってしまい諦めかけたが
根性で、日光へ向かってひたむきに伸びていく植物のように伸ばす…なんとか成功。


もはや外科執刀医と同じだね…最近は外科手術もよくTVで紹介するけど、手順や心理戦が一緒。
うまくいかないと何時間も格闘し試行錯誤、うまく言った瞬間に助手に縫合を任せて後方に下がる。あのホッっと安堵する瞬間が一緒。メス先でコンマなんmを加工するのも一緒。ただ加工してるのが人体っていうだけ。
どっちも「手技」って言いますからね。何を手先で加工する場合も。


キー側は修繕できても、たいていは受け側のステンレスの爪は曲がってるので、はまりやすく取れにくいように曲げて修正。


ABSなら接着で済ますんだけどねぇ…



以前のエントリー
http://d.hatena.ne.jp/geasszero/20120731/1343660437



で完了、っと思ったが


考えてみればACSはABSより硬度・耐久性は増すが柔軟性は少なく、(ノートのキーって固く削れていくよね)
=硬いと割れる、柔軟性があると曲がる、の法則。


一体成型で一体になってない、適当に肉盛しただけだと
剥離や折損しやすいおそれが高い。
なんせ、接合する相方は、カッターのように薄いステンレス鋼なのだ…強度負けする。


よって「パーツ複製」


型取りなんてうちには設備持ってないし、あれは精度は出ない。
デザインナイフとヤスリでひたすら1工程づつコピーするのだ。いわばこれが金型製作である…
金型とは製品の形状を裏返した形で作るもの=ビル・マンションの型枠と同じものを複雑な形状でやってる。


50分ぐらいっでちゃっちゃっと作り、現品と合わせて動かしながら不具合を見つけては形状をすりあわせしていく。
材料はガンプラのABSのランナー。これも耐久性は高いのでプラモ改造や自作の必需品。
形状が出来上がったら、最後に抜けないようにACS本体側をヒートペンで、えぐって肉盛っていき、「堰き止めのツメ」にしてしまう。
ご覧のように、従来は左右一体のパンタグラフを切って分割してるので、片方は新たにツメで固定しないとすぐ外れちゃう。


今度も動作はバッチリ。
外側パンタグラフの幅が純正状態とは違ってしまってるので、KB本体側のステンレスのツメ幅を調整して対処。


 ◇


もうひとつ、最後の手段がある。


比較的簡単だが、
精度は今一歩劣る。キートップがとりあえずついてて、入力可能ならいいという方式。


・ABS棒を用意(ガンプラ作ってる人にちょうだいって頼もう)
・ABS棒を真円に近づくようヤスリで整形
・その外径に合わせた径で、キートップのバッテン印のど真ん中にドリル穿孔(キツキツで押し込んで圧入できるぐらいに)


さーわかってきましたね、非常に原始的ですがやりやすい加工法。


・ヒートペンで、棒が抜けないよう上側から溶かしこんで、せんべいのように広げてしまう
原発の煙突みたいな、入力端子の上のゴムスプリングがありますね、
・棒を装着したキートップをはめてみて、最適クリアランスを割り出す、
・カッターやデザインナイフで切って詰めていき、クリアランスが満足行くものになったら、
・アロンアルファ耐衝撃用で接着


棒が細いので、押す角度によっては入力されない。上下左右の押しこむ方向にも注意しないと入力されない。
パンタグラフみたいに押す方向を一定化してないので…
まだ試してないが、入力端子側もABS棒をヒートペンで潰して平らに広くした方がいいのかも。


ちょっとクセがつくし
キートップがどうしても傾いて接着されちゃうし…
色々と難点もありますが、古いノートPCのゴムスプリング直接押しなんていう悲しい風景からはおさらばです。


この方式だと、キートップを自作もできる。
さすがにプラバンは弱すぎるので、アキバの秋月や千石電商とかのネット通販と店頭で、ABS板が売ってますから
これを切削加工し、アロンアルファ耐衝撃用で接着しながら完成させるのがベター。


うちの場合、すこし左へ向かって押す感じだとうまく入力できる。
純正のパンタグラフ方式は、キートップの平面の広い範囲で、まっすぐ押しこむので、端子が反応する。
ABS棒は細いので、傾いてしまうので、時折、端子までうまく届いてない時がある。ここらへんは端子に当たる側も溶かして広げるなど今後の改良次第で軽減できそう。
ときおり入力されないと不便なのはBIOSパスワードなど、入力結果が画面表示されない場合だね。


あーちなみにこうやってABS棒をかますのは、最近の「ACS樹脂」のキートップの場合でして(ふつうキートップに刻印されている、使用樹脂名が)
もしABSなど一般的樹脂であれば、直接でアロンアルファ接着できます。こっちのほうが入力成功率はあがるはず。


本体側を金属で受ける方式はおそらく、軽量化のためなんだろうけど…
おかげで薄すぎてすぐ折れちゃうし
金属と樹脂では樹脂が負けて削られたりスパッっと両断されちゃうし
この構造考えた奴は、設計をCADでやるだけで、実情を知らない馬鹿だと思うよ。
現物をいじる側にいたなら樹脂と金属ってペアは考えない。ふつうはすべて樹脂で済ますの。


ABS板でキートップまで自作の作例。ゴムスプリングへ直接接着し、押してもふらつかないようにおなじABS板で下駄を履かせている。




 ◇


修理(簡易補修)依頼受け付けます。元金型エンジニア、元日立系DELL系CE。
ただ、「知人のを直してあげたレベル」でしか対応できないので、「成功報酬で」一箇所100円、耐久性はそれなりということで。
失敗=破損も覚悟の程を…ここらへんは衣類のお直し屋さんに準拠。
外見を優先するほど、失敗、受付できない、の確率は上がります。見た目が損なわれてもちゃんと動けばいいというほど確率は下がる。中古ジャンクPCに向いてますね。
往復送料はご負担ください。(KBだけ外して送ったほうが送料安いし本体の破損も免れますよ)


ノートのKBってパンタこわれただけでオシャカになるのでもったいないですよね。
ご相談はまずはコメント欄からどうぞ、公開はしませんのでご安心を。