http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/152627
2012年の11月にハディドの案が採用されたときは、その斬新なデザインに感激、東京の新しいランドマークになると思ったほどです。――それがなぜ考えが変わったのですか?
それでいろいろ調べたり、建築家の方たちの意見などを聞くうちに、やっぱりおかしい、国立競技場の改修でいいのではと考えるようになった。ハディドのデザインも二転三転、斬新さも失ってしまった。
――新国立競技場には機能、費用、景観面から批判が出ています。まず機能ですが……。
今の設計だと、天然の芝生が育たない。風通しが悪いし、日当たりもよくない。愛知県の豊田スタジアムは開閉式の屋根付きですが、ラグビーでスクラムを組むと芝生がズルッとはがれてしまう。それくらい芝の育成は難しいし、時間もかかる。
■「毎月、ポール・マッカートニーを呼べますか?」
――新国立競技場ではサブトラックは仮設。五輪が終われば撤廃されます。そうなるとサブトラック兼備でないので、せっかく造っても世界陸上のような大会は開催できなくなりますね。
造る方がスポーツに無知で、現場を無視しているからそういうことになる。以前、ある地方都市で体育館が完成したので、新体操の選手がコケラ落としに模範演技をやって欲しいと招待された。ところがいざ演技をする段になったら、こん棒はやめて欲しい、落としたら床が傷つくからと言われた。実際に新体操の選手から聞いた話です。何のための体育館か。こんなナンセンスが横行しています。
――年間の維持費もJSCは40億円と発表しています。これも今の国立競技場だと6億〜7億円だそうです。
維持費がかかってもコンサートやイベントで稼ぐからいいという考え方なのでしょう。でも、一度に8万人も集めるコンサートを毎月1回開くなんて無理です。