先従隗始・温故知新

はてダからの引っ越し(http://d.hatena.ne.jpのURLからここへ自動転送されます)。元サイト:アニメイレコムhttp://kasumin7.web.fc2.com/ire/

農業アンチテーゼ

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121012/238002/
「日本の農業に、正しく絶望しましょう」
神門善久明治学院大学教授インタビュー


 今、耕作放棄地の半分は土地持ち非農家のものだ。彼らは営農の意欲も能力もないが資産として保有する目的で農地を持ち続ける。そしてどこかが耕作放棄すると、まるでドミノのように周囲の耕作放棄が拡大していく。自称改革派の人たちは「やる気のない人間は放っておいていい人間だけ伸ばせばいい」と言うが、それはイメージ論に過ぎない。隣の農地がやる気のない人間によって耕作放棄されたら、どんなに耕作技能のある人がいても、営農意欲をそがれる。耕作放棄地は害虫の巣窟になって周りに伝播するからだ。

 害虫が来るからと除草したら逆に不法侵入で訴えられる。あるいは財産を汚したと賠償請求されるかもしれない。打つ手なしだ。こんな状況でまじめにいいものなんか作る気になれない。だから私は「平成検地」をすべきだと言っている。つまりまず、誰がどういう農地の使い方をしているのかを確定するところから始めなければいけない。

 川下問題は消費者が、良いものと悪いものの区別がつかない点だ。日本の農産物は高品質、安全なんてウソで、これもイメージ論だ。客観的事実としては、残留農薬でも残留成長ホルモンでも日本の基準は先進国の中で最もあまい部類に入る。安全性の問題は多々ある。例えば発がん性が疑われる防腐剤のソルビン酸カリウムなんてものを平然と使っている。
日本人は本当に舌が肥えているのか?

 しかしさらに深刻なのは、日本人は舌が肥えているとか、日本の農産物は安全、安心だなどと思い込んでいる人が多いことだ。そして欧米人は味オンチだ、と決めつける。

 人間は、相手が敏感で自分が鈍感な部分というのは無視するという悪い癖がある。例えば、日本人の中でチーズの種類をきちんと言い当てられる人が、どれだけいるだろうか? 僕らが小学校のころはスティックチーズで育ったから、細かいことを指摘されても何のことか全然分からない。しかし欧米人だったらいくつも種類を言い分ける。少なくとも乳製品については日本人よりも敏感だろう。にもかかわらず「日本人は味に敏感だけれど、あいつらは味音痴で安全、安心の管理もできない」というようなことを言っている。これは驕りなのではないか。