・戦略論の基礎に入ろう。
まず、外交と軍事は連続している、ということを覚えていてほしい。
外交が平和担当で、軍事が戦争担当、と言えるほど世の中は単純ではない。
外交と軍事の交わる部分を安全保障と呼ぶ。
・武士の伝統が強く尚武の気風の強い日本人には意外かもしれないが、
安全保障戦略の大半は外交戦略である。
すぐに手が出るのはチンピラと同じである。
◆兼原信克氏・略歴
1959年山口県生まれ、
80年外務公務員採用上級試験合格、
81年東京大学法学部第二類卒業、同年外務省入省。
欧亜局ロシア課首席事務官、北米局日米安全保障条約課首席事務官、
国際連合日本政府代表部参事官、条約局法規課長、総合外交政策局企画課長、
北米局日米安全保障条約課長、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、
総合外交政策局総務課長、欧州局参事官、総合外交政策局参事官等を経て、
2011年より在大韓民国日本国大使館公使。
09−10年早稲田大学法学部非常勤講師。
講師時代の講演内容をまとめた著書『戦略外交原論』
◇
・壱岐正は、上司の金子綿糸部長に2冊の本を返却した。
1ヶ月ほど前に、相場について素人でも解る本はないですかと尋ね、
金子部長がたまたま手もとにあった入門書のようなもの、相場師列伝の2冊を貸したのだ。「いや、ご丁寧に、それにしても壱岐さんはよく勉強しますな。
何事につけても、そうして徹底的に勉強するのは、陸士、陸大の教育方式なんですか」商業用語から貸借対照表の見方、手形の書き方、布の見分け方、商業英語まで、
自分より年下の若い社員に教わり、勉強している壱岐の姿を見て、
金子は、普通の人間では真似ることの出来ない勉強ぶりだと思った。
瀬島龍三
・わからないという勇気。
これが書生時代から叩き込まれた習性の一つだ。
関連して、答えるときに「だったと思います」というと必ず(小沢に)叱られた。
「思いますじゃないだろ、調べろ」
「知らないのに知ったふりをするな」
曖昧なこと、よくわからないことについては第三者にも意見を聞く。
そのスタイルは徹底的に叩き込まれたものである。