寿司屋に勤めれば、ある程度は「きちんとした寿司の作り方」がわかるようになる。
何も「すきやばし次郎だけが寿司」というほど極端である必要はない。
むしろ、庶民の日々の食材レベルでも、手順や素材を守れば、かなりいいものができるという範疇。
ヤマザキの食パンだって、再調理の手順をきちんと守れば、
へたにさめてしまった、2日以上経過した、高級パンより美味しい。
では、コーヒーの要点は何か。
・焙煎後数日
・挽いたら即
なので今や、数百円の喫茶店のコーヒーを、711コーヒーが凌駕していたりする。
あれは焙煎した豆が入っており、その場でひいてすぐ煎れる。今や紙カップ自販機でも同じものが登場している。
例えるなら、スーパーのうなぎ蒲焼も焼きたてパリッになってしまった感じ。
うなぎ店の蒲焼きは焼きたてパリッなんですが知ってましたか?
パンもうなぎも、焼き立てパリッを守れば低級品でも美味しくなっちゃう。手順を守ると。
パンの場合、翌日以降でも一度蒸かしてからまた焼くと蘇る場合もある。
たとえば20年前ならトップレベルの新宿駅前の喫茶店、凡。
ここのコーヒーはいわば「佃權のおでん」
佃權のおでんと、スーパーで300円の一正おでんの違いは
「ダシ」
要は佃權のダシは、容赦ない量の材料を使い、一人前のダシにしては過剰なほど多いのだ。
種物ももちろん良質な素材を使ってるが、佃權おでんというプレミアを構成している80%は、ダシが理由なのである。
新宿の凡は公言しているとおり、通常の数倍の豆を、たった一杯に使ってる。濃いし、出がらしにならないうちに捨てている。
逆に言えば、安いコーヒーはたとえ豆は同じでも、使用量が少ない。
これはハム・ソーセージでも同じで、100g単価が安い製品=水いっぱい混ぜている。カップ麺で言えば、安いものは「なんだかよくわからない食品カス=ゴミ」をいっぱい混ぜている。いわゆる大豆蛋白とかタンパク加水分解物と書かれている物質は、食品製造工程で出たカスで、以前はゴミとして捨てられていたものをリサイクルするようになった物質だ。従来、食品製造で出たカスは主に豚の餌として使われてきた。ちょっと高い豚肉はケーキやクッキーばかり食べて育っている場合がある。
では、なぜ最近は安いコーヒーでも美味しくなったのか。
これは「焙煎のやり方と、鮮度管理で、かなり高級コーヒーに近づく」からで、シンプルな食品ゆえである。
凡のコーヒーは1000円。ちょっと生っぽくて、ちょっと濃い目、ってだけなので
今だったら711コーヒーとか上島珈琲とかでいいやってなってしまう。このレベルでも生っぽさや風味は十分だ。今やネスカフェだってあれこれ工夫しており値段以上に美味しい。
逆に言うと、市場が飽和し始めている。手間と工夫による
「価値」の値段がどんどん下がっている。
コーヒーだって、無数のバリエーションが有る。
キリンFIREの冷水重ね焼き、なんてまさに水出しコーヒーのうまさそのものでいわば正道からすれば異端である。
ゼブラで飲めるプレスコーヒーも豆を絞りきったもので、亜種、異端である。素材の風味を求める人にはたまらない。
だがそれぞれおいしい。
紅茶だってアールグレイもあれば、ダージリンは香り、アッサムはコク。
何が邪道かというのも堅苦しくてつまらん話だが=主観どうしの戦争になってしまうが
当方の主観で言うと、ブラックのみで勝負。ダージリンもFTGFOP淹れたてストレートのみで勝負。
お菓子なんて基本的に邪道。
上島珈琲店はブラックがおいしいのに、黒糖コーヒーとか、「中途半端な工場生産の生菓子」とか、あれで台無し。
自転車でちょいとゼブラや上島へ出向き、ブラックS一杯だけ頂いて帰る。(スタバはおかわり100円でデカフェも置いてあるので2〜3杯可能)
それなりの上質のコーヒーには、釣り合う菓子や食事および飲食手順と、何より「ムーディ」が必要で、難しい。
おいしいコーヒーの店に、半端なコージーコーナーレベルの量産菓子が陳列してある時点で失格。
その点、ゼブラはコーヒーとクロワッサンが釣り合っている。
まだ老舗洋菓子店のナカタヤで、コーヒーはネスレのバリスタでいいから、本格洋菓子をいただく、ほうがマシ。(コーヒーと菓子が不釣り合いの店に行くぐらいなら。)
ここはコーヒーとケーキの主役割合が半々だから。
◇
同じ豆でも、大量仕入れならコスト安くなるし。
他人任せの一流ホテルに限らず、老舗の有名喫茶店でも「昔と変わらぬ」に固執し
毎日毎日それを仕事として改良を重ねるコンビニや大手メーカーの研究開発部門に、やがて負けてしまうのは共通。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48358
一杯1200円のコーヒーよりも、コンビニコーヒーがおいしい理由が分かった。