先従隗始・温故知新

はてダからの引っ越し(http://d.hatena.ne.jpのURLからここへ自動転送されます)。元サイト:アニメイレコムhttp://kasumin7.web.fc2.com/ire/

モンベル レインウェア 雨具 2016モデルをレビューする


前のエントリー
http://d.hatena.ne.jp/geasszero/20160909/1473350737


 ◇


・ストームクルーザー
・レインダンサー
トレントフライヤー
・フィールド
・サイクルレイン


ゴアのラインナップは以上。



・ストームハンター


は、どうやら山岳業務の現場ではあまり使い勝手が良くないとのことで2015で販売終了。
今は重ね着…レイヤーの時代なので、救助でもガイドでも、普通の雨具を二枚重ねる(要救助者に着せる)とか、シェルと組み合わせるとか、したほうが現場冥利らしい。
ストームハンターは一枚物なのでむしろ中途半端な機能性ってことね。時代に先を越されたわけだな。


代わりに、より用途を拡大した「フィールド」ブランドの製品群を2016より発売開始。
端的には農作業用として表示している。
最近はワークマンやミドリ安全でも、ゴア雨具は普通にあるので、そうした需要へモンベルが参戦…けどなあ、ネットショップとモンベルショップだけじゃ、業務用の販路は拡大できんぞ…百姓はイオンモールまで雨具買いに来ないし。


 ◇


ストームクルーザーは…


いわゆる「バカの一つ覚え」とりあえず好日山荘に来たがわからんのなら買っとけの部類。
2007モデルまではストームハンターみたいにジッパーカバーが付いた厚手の使いやすい=用途の幅広い製品だったが(逆に言うと最近までこれしか売ってなかった…なんと初年は1982!うちは93モデルから水色のを使用、当時は91モデルのハミングバードのゴアが第一世代ゴア採用で分厚かったので、第二〜三世代で薄いモンベルには驚愕した)


2008あたりから防水ジッパー、ゴワゴワした織物生地で透湿性重視、という仕様変更…
このゴワゴワが居住性などから不評(高山アタックのハードユーザーは知らんが、趣味の山歩き程度の層には)


…なので2015にゴア社が新型のしなやかなレイヤーを提供し、モンベルとノースフェースのみ導入している。同時に新型は襟が廃止され、新型シームテープは細くても頑丈なのが採用された。従来のシームテープは一切ノリがはみ出なかったが、新型は若干ノリをはみ出す(てかてか光ってる)ことで経年の擦れや引張りに強くしているのかもしれない。もし端部にノリが足りないとそこから剥がれてくるので。


基本的に、どんな用途でも扱いやすいストームクルーザーは2007まで。
2008以降は「ある程度気合の入った山へアタック、泊まり歩きに行く用途以外では使いにくい、耐久性が落ちる=機能特化」
すぐカビる、すぐ皮脂が浸透してシームテープが死ぬ(特に襟が超弱い、ついでフード)、すぐメンブレンに穴あくなどなど…


基本的に、薄くなればなるほど確かに軽くコンパクトになるけど
・保水の総量が減る=すぐカビる原因
・耐油性も落ちる=旧型と違い、周囲のレイヤー層があまり逃がしてくれない
2015以降のモデルも、はたしてこの辺が改善されたか不明。怖くて買えない。


 ◇


レインダンサーは…
言わずと知れた「ストームクルーザーの旧型を維持」
旧来ユーザを保持しつつ、廉価版として客数も確保。
でも結局はストームクルーザーより遅いとはいえ立体裁断や防水ジッパーも導入されてきており、旧型がいいというマニアには悲しい仕様である。ストームハンターが最後の砦だったがが販売終了…
山歩きとしては、ストームクルーザーだけの機能がほしい切実な理由があればそっちを買えば良い程度かな。上級やハードになればなるほどそうなりがちだし、あまり上級になるとむしろただの雨具でも不便して重ね着やシェルになっていきそうだけど。ただのゴア雨具ってただの山歩きだけの人たちが荒天時に緊急避難的に使うものだからね。


2014まではストームクルーザーだけが幅広のシームテープ採用により耐久性がいいという触れ込みだったが、2015の全モデル素材一新によりモデルごとのシームテープ差はなくなったようにみえる…実際はレポートがふえて統計が出ないとわからんけど。
個人的には、いまは街中のバイクや自転車、自宅から徒歩圏ですぐの林道歩く程度なので、レインダンサーが必要十分、生地がしっとりしてて90年代ストームクルーザーっぽくて好きだし。アルプス2000m以上で急な雷雨暴風で逃げられず雨中行軍やビバークで着るなら新品のストームクルーザーじゃないと死ぬかもだけど…濡れたら死ぬから。寝たら死ぬから。パトラッシュ…実際、そういう状況で古いゴア雨具の人だけが若干浸水して冷えて死んだ事例もあるから…


 ◇


トレントフライヤーは…
脇の下は換気ジッパーあり。
要は「3層で分厚いから蒸れるんじゃい!」
内側の層はメンブレンにスプレーコートするだけにした、という仕様のゴア・パックライトを採用。
パックライトはランニング選手や自転車競技向け。なんせ透湿性能と軽さのために耐久性が犠牲になってる。インナーレイヤーがない、表裏レイヤーが薄い、ことが透湿性アップに繋がる。


以前、完全2レイヤーで内側のメンブレン保護がないモンベルシュラフカバーを使っていたが、やっぱりすぐメンブレンが傷んで浸水するようになっていた。メンブレンに極薄ウレタンコートした2,5レイヤーのパックライトでも、コーティングなんて次第に剥がれてくるから寿命は大差なかろう。


岩山でレイヤーやメンブレンに穴が空いても泣かない。何かにぶつけたり引っ掛けただけですぐ浸水するようになっても泣かない。
下手すりゃ数カ月ごとに買い換えても平気。
そんなセレブにはよろしかとでしょう。


 ◇


フィールドは…
さわってみると、分厚い!プラスチックじゃねえのってぐらい分厚い箇所も。脇の下は換気ジッパーあり。
農作業だけあって、ジャケットとアノラックとビブをリリース。ジッパー付きだと浸水するという人はアノラック、水産業には首までツナギになってるビブかな。
パンツは土管。ブーツ脱ぐためのジッパーも無し、裾をしぼる紐だけ。
おそらくストームハンターの需要も吸収したモデル。あれほど補強生地は入ってないけど。




サイクルレインは…
脇の下は換気ジッパーあり。
かなりロードバイク専用設計。3素材別にリリース。


ゴア素材はパックライト。耐久性がいまひとつで常用だと3年がいいとこだろう。汗っかきにはどうしてもパックライトで透湿性を稼ぐ必要があり、同時に軽量化や運動性の良さにつながる。
ゴアモデルは膝がストレッチ素材で伸びる、ってことはメンブレンも一緒にのびるので耐久性は落ちる。
尻部分が厚手生地で補強されてるのは本品だけなので、オートバイ向けパンツにはいいかもしれないが、ロードバイク用のピッチリなので中に重ね着ができない。ナップスなどで売ってるオートバイ用ゴアあるいは他の透湿生地の雨具のほうがマシか。
なんせパンツが19000とかバカ高い。かつてストームクルーザー上下セット売りで実売23000ぐらいだったような…
ちなみに半ズボンタイプもあって少し安い。


ハイドロブリーズ素材もリリース。
上下24000円程度とそこそこ。こちらは全面ストレッチ素材。
これも2レイヤーなのでメンブレンをまったく?ほとんど?保護してない。極薄だし裏側を見ると不安になる。


2レイヤーや極薄アウターレイヤーはコケると一発終了だから。ぶつけた箇所は次回から確実に浸水する。ましてや自転車とオートバイは徒歩の登山と比較してすごい速度でこけてぶつけてこするわけで…いやぼくは大雪直後のR299でバイクですっ転ぶたびにゴアリペアシートをアイロンして表地を縫製して補修して今でも使ってるけどさストームクルーザー。塩カルってけっこう滑るんだよあれ、コーナー地獄。


緊急用の極薄コンパクトモデルもリリース。
エアライトとドライテックを採用。たぶん500ccビール缶ぐらいにたためる。
12000円という価格からも耐久性は諦めるべき、へたすりゃ2年目で浸水。常用すべきではない。




総評。


時代なりにだんだんと用途別の展開を変えてきている。
まだ試行錯誤が続くようだ。
今年のカタログはやたらにサイクル用品のが分厚い。モンベルも山用品は収益が落ちてきてサイクルやフィールドなどに進出しアイテムを増やし続けている…クリートシューズまで出してるし。
好日山荘が店舗を減らしてファミリーキャンプ専門店を出したりと、明白に山岳アウトドアビジネスは縮小の道をたどっている。河原キャンプやカーキャンプ程度のキャプテンスタッグ程度の、ばっかり需要があるんだろうね。山ガール的なすこし本格的な山に入る方面はブームが一巡したか。


少なくとも、いつまでもストームクルーザーの馬鹿の一つ覚えってのはよしたほうがいい。


原則としては、高額なレイヤー素材ほど耐久性、耐衝撃性はいいので、長持ちはさせやすい。
でもパックライトも高額なので、あれは別。
基本的にゴアと、ゴア以外のやや安い素材とでは、という意味合い。


そこらで売ってる安い透湿性雨具は表レイヤーが貧弱ですぐ撥水性が消えてしまい、蒸れやすくなる。耐衝撃性もなくて転ぶと浸水するようになる。